Home > 中国史 > 今回はグロくて長い記事です

今回はグロくて長い記事です

 と言うわけで、今回はカニバリズムの記事です。心細い方は読み飛ばしてくださいね。

 で、なんでこんな話になるかというと夏のまんがまつりで購入した、トリビアの泉のブレーン陣の一人・唐沢俊一が出してた同人誌『トリビアの歪 2』を読んでいて、アレー?と思ったからです。
 ま、この同人誌自体はエロ過ぎたりグロ過ぎたりして番組じゃ取り上げられないだろうなぁ~~と言うネタばかりなのですが(例:チンパンジーは早漏、ゴリラは短小)、その中に

>trivia 9
>元朝の時代に陶宗儀(とうそうぎ)という人によって書かれた
>「輟耕録」(てつこうろく)には「人間を料理するには
>手足を縛って沸騰したお湯を浴びせかけて、竹箒(ほうき)で苦い
>皮を剥ぎ取る」とある。人間の皮は苦いものらしい。


>trivia 10
>同書によると人間を食べる際、おいしい順番は小児・婦人・男子という順番。


と言う箇所があって、あれー?《輟耕録》って《南村輟耕録》だよなぁ?確かアレって金院本の題目が載ってたり、岡本綺堂中国怪奇小説集』光文社文庫 に何本か怪談が載ってたりした本だよなぁ?人肉食の記事なんかが載ってる書物だったかなぁ?と言う疑問があったためです。なんだか呑気な随筆集じゃなかったかしら~という先入観があったんでびっくりしてしまったんですね。

 で、調べてみると、中国のカニバリズムを語る際に必ずと言っていいほど触れられる、桑原隲藏の論文、「支那人の食人肉風習」でも

>之にも勝る一層の慘事が、元末擾亂の際に實現した。その光景は、當時の陶宗儀の『輟耕録』に委細に描出されて居る。

と、《南村輟耕録》にカニバリズムの記事があることが見えます。しかし、具体的な記事の記述はありません。

 で、ネットで検索してみると簡単に唐沢俊一がネタにしたと思われるサイトを発見…・。

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Keyaki/8922/main.html
ココのサイトの
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Keyaki/8922/zatu-b/zattu5.html
この頁。

で、中程に

>元朝の時代に陶宗儀(とうそうぎ)という人によって書かれた「輟耕録」(てつこうろく)には次のようなことが書かれている。
>「人間を料理するには生きたまま甕(かめ)の中に座らせておいて外から火で焼くか、鉄架の上で生きたままこんがりと焼く」
>「手足を縛って沸騰したお湯を浴びせかけて竹箒(ほうき)で苦い皮を剥ぎ取る」
>などなど、どうやら皮は苦いらしい。この人によるとおいしい順番は小児・婦人・男子といった順番。

 え………と、目も当てられないぐらいそのまんまの記事に出くわして、ちょっと面食らってしまいました。
 奥付を見ると1999年8月の記事のようですね…。なんだか、ルパンを追いかけていて、トーンでもないモノを見つけてしまった。どーしよー。って感じですが(今夜のBSアニメ夜話カリ城ですしね)、この記事の趣旨は別に唐沢俊一パクリ疑惑の追求にはないので、このままほったらかしにして話を進めます。ま、傷があっても素晴らしいんじゃないの?とは思いませんが。

 どうもこうなると《輟耕録》本文に当たってみないと本当はどういう記事があったのか分からないようです…が、意外と名前を聞く書物なのにネットには文がないようです。仕方なく寒泉の《四庫総目》を読むと、

>03.子部 卷一四一 子部五一 小説家類二(雜事下)  p-1203
>【輟耕録三十卷】(内府藏本)明陶宗儀撰。宗儀有《國風尊經》,已著録。此書乃雜記聞見瑣事,前有至正丙午孫作序。書中稱明兵曰「集慶軍」,或曰「江南遊軍」,蓋丙午為至正二十七年,猶未入明時所作也。郎瑛《七修類鍮》謂:「宗儀多録舊書,如廣客談《通本録》之類,皆攘為己作。」今其書未見傳本,無由證瑛説之確否。但就此書而論 ,則於有元一代法令制度,及至正末東南兵亂之事,紀録頗詳。所考訂書畫、文藝,亦多足備參證。惟多雜以俚俗戲謔之語、閭里鄙穢之事,頗乖著作之體。葉盛《水東日記》深病其所載猥褻,良非苛論。然其首尾賅貫,要為能心於掌故。故朱彝尊《靜志居詩話》謂「宗儀練習舊章,元代朝野舊事,實借此書以存」,而許其有裨史學,則雖瑜不掩瑕,固亦論古者所不廢矣。


 と、面倒なのでそのまま貼り付けるとこういう記事になっていて、雑多なことを放り込んだ書物であることは間違いないようです。たとえ内容が、郎瑛の言うように様々な記事の再録だったとしても、徐乾学が《資治通鑑後編》を編集する際に種本の一つにしたようですから、信憑性もそれなりにあるんでしょう。加えてどうも世間の下世話な記事も含んでいることが分かります。

 で、どうしても気になったので書虫で注文して買ってみました。便利な世の中ってお財布に厳しいですね。

 ともあれ、手元に届いたのは陶宗儀歴代史料筆記叢刊 元明史料筆記 南村輟耕録》中華書局 で、繁体排印版ですね。で、ペラペラ捲ってみると、どうやら第九巻の〈想肉〉と言う項が件のトリビアの元ネタの元ネタであるようですね…。また長いんですが引用してみると…

>天下兵甲方殷、而淮右之軍嗜食人、以小児爲上、婦女次之、男子又次之。或使坐兩缸間、外逼以火。或於鐵架生炙。或縛其手足、先用沸湯澆潑、却以竹帚刷去苦皮。或盛夾袋中、入巨鍋活煮。或刲作事件而淹之。或男子則止斷其隻腿、婦女則特剜其兩乳。酷毒萬状、不可具言。總名曰想肉、以爲食之而使人想之也。

ふー…手打ちは疲れますね。
 コレ読めば分かるとおり、別に陶宗儀が食人を好んだわけではなく、戦乱に於ける軍隊(淮右というと、このあたりだと何処の軍になるんでしょうね…これは別に考察しないとダメですね)の中には食人を嗜む軍隊もあったという話ですね。事実、この後延々と過去の食人の話が続きますが、概ね戦乱に於ける軍隊の話ですね。
 件のトリビアの元ネタ部分は勿論、

>或縛其手足、先用沸湯澆潑、却以竹帚刷去苦皮。
>以小児爲上、婦女次之、男子又次之。

と言う箇所ですね。
 なんというか、料理法は他にも紹介されてるんですけどね…ぐらいしか言えませんねぇ…。皮が苦いと言う表現が気に入ったんでしょうけど、脆い表皮を取り除く…という風にも読めないことはないと思うんですけど…。
 ま、いつもの事ながらなんで自分はこういう事をムキになって調べてるんでしょうかねぇ…。



ツッコミ:2

釣本直紀 2007/06/16 12:59
唐沢俊一さんは自著『トンデモ一行知識の逆襲』の中で


晋朝四代目皇帝の恵帝(司馬衷)は百姓が米が食えず餓死すると聞いて、
「米がなければなぜ肉を食べないのか」と首をかしげた。
(中略)
 ところで、岡本さんはこの一行知識を、ちゃんと正史である『晋史』からとったらしい。
一行知識に添えられていた手紙に、集まった一行知識の数が案外少ないことについて、
「雑学書からこれはと思うものを抜き書きしたものは全体の一割ほどで、
あとは全部、本で読んでいてたまたま見つけたウラ話、ウラ知識の類ですから、
やはり効率が悪いのかもしれません」
 とあった。いや、岡本さん、それこそが正しい一行知識の集め方である。
雑学本に掲載される一行知識は、だいたい、どれも元ネタが決まっているから、
十何冊か読むと、だいたい、ネタがかぶってどれも同じに見えてしまう。
手軽に走らず、本を丸まる一冊、読んだ中から拾い出す一行知識こそ、
その本から得られた知識が濃縮された、ホンモノの一行知識なのである。


と語っています。つまり『書物を読んで気に入った点を抜き出す』事が
唐沢さんなりのトリビアの正当な集め方の様です。
若しもそのウェブサイトが『トリビアの歪 2』の引用元だとしても、
多分唐沢さんはその引用を何とも思っていないんじゃないでしょうか。

それと唐沢さんは、上記の様に一行知識を読者から募集しています。
ひょっとすると、そのネタは天誅剣の管理人さんが唐沢さんに送ったネタなのかも知れません。
宣和堂 2007/06/16 23:11
■釣本直紀様
 古い記事にコメントありがとうございます。

>多分唐沢さんはその引用を何とも思っていないんじゃないでしょうか。
 多分、昨今騒がれている盗作騒動も、何とも思っておられないあたりが問題視されているんだと思います。

>ひょっとすると、そのネタは天誅剣の管理人さんが唐沢さんに送ったネタなのかも知れません。
 本当にそうだと良いですね。

 本日タマタマ、本棚から1995年発行の『幻想文学44 【特集】中国幻想文学必携』と言う本を引っ張り出して読んでいたら、中野美代子・武田雅哉 編『中国怪談集』河出文庫 に陶宗儀の随筆「人肉を食う」が収録されていることが紹介されていました。残念ながら手元にこの文庫がないのでまだ確認していないので、《南村輟耕録》の〈想肉〉と同じ記事かは分かりませんが、案外、これらの記事のネタ元かも知れませんね。

トラバ:0

この記事のトラバ
http://sengna.sakura.ne.jp/sb/sb.cgi/23
今回はグロくて長い記事です from 宣和堂遺事
トラバなし

Home > 中国史 > 今回はグロくて長い記事です

その他
  • RSS1.0
  • Atom0.3
  • SB2.19R

    管理室

    宣和堂遺事

    宣和堂電網頁

    フィードメーター - 宣和堂遺事

    track feed

    この日記のはてなブックマーク数

    Add to Google

    life_box

    回頭