NHKドラマ 蒼穹の昴 第六回 皇帝のお気に入り

 と言うコトで、今回は梁文秀活躍の回ですね。彼が慈嬉太后に《治平宝鑑》を講釈するのが見所ですね。話に出て来る孝荘太后太宗ホンタイジ皇后にして順治帝母后で同時に康煕帝祖母に当たる人ですね。…まあ、同時にドルゴンと恋仲にあったとか言われる人でもあるわけですが…。聡明だったとか、美人であったとか言われる人なんですが…。

《清史図典1》P.194

《清史図典1》P.194

 画像を見ると…なんだか、微妙…。頭は良いんでしょうけどね。

《清史図典2》P.175

《清史図典2》P.175

 一応、まだまとも?だと思われる画像をチョイス。晩年はガキ使いのおばちゃん浅見千代子)似の老女になっていくわけです…。あわわ…。
 で、原作に出てきたのかよく憶えてませんが、《治平宝鑑》と言う書物、どうやらいい加減にチョイスしたわけではなく、本当にある書物みたいですね。

  • 呉樵子 註訳 《治平宝鑑
  •  《治平宝鑑》は慈嬉太后勅撰の書物みたいですね。漢代から明代までの政治に参与した女性に関する歴史書…だったみたいですね。と言うワケで、慈嬉太后に《治平宝鑑》の講釈するというのも…なんだか釈迦に説法という感じもしますね。おまけに明末で記述が終わっているようなので、この本に孝荘皇后が出てくるかはちょっと微妙ですし…。

     ちなみに字幕では文皇后となっていましたが、《清史稿》などでは文皇后ですね。簡体字変換するときに間違えたんでしょうが、国営放送がカッコワルイ。

    NHKドラマ 蒼穹の昴 第五回 宮廷へ

     と言うワケで今更先々週放送分の更新です。
     丁度、春雲が宮廷に上がった頃ですから、史実的にはあまりネタが無いんですよね…実際。ようやっと春児が貧乏辮髪から真っ当なキッチリ辮髪になったという印象しか…。
     というのはともかく、今回は京劇回だったわけで、その辺でチラッと画像出してお茶濁しておきます。

    樊梨花、薛金蓮 《故宮珍蔵人物照片薈萃》紫禁城出版P.266

    樊梨花、薛金蓮 《故宮珍蔵人物照片薈萃》紫禁城出版P.266

     いやぁネタはないなぁ~等と思って 《故宮珍蔵人物照片薈萃》を見ていたら…丁度、劇中に出てきた演目《樊江関》の写真が見つかったのでとりあえず貼っておきます。
     この写真集のキャプションとしては、京劇の写真は間違いなく紫禁城収蔵のモノだけど宮中で撮影されたモノ、宮廷の外で撮影されて宮廷に収蔵されたモノがある……と言うコトです。
     なので、宮中で撮影されたかも知れないし…そうではないかも知れない写真と言うコトになります。まあ、樊梨花薛金蓮の衣装の参考くらいにはなりますかね。
     まあ、衣装は実際のモノよりも見栄えのするモノを使っていると解釈したら良いんですかね?

    NHKドラマ 蒼穹の昴 第四回 皇后選び

     と言うワケで、今週は親政を睨んでの光緒帝選秀女=皇后選びですね。ここで有名な珍妃登場です。
     ドラマの中でも、光緒帝徳馨の娘二人の美貌にぽわわ~んとなって危うく未来の皇后の象徴である玉の如意を渡しそうになったのを、慈嬉太后が『皇上!』と、一括して弟・桂祥の娘=姪の靜芬ドラマでは喜子になってましたが…)に渡すように促してましたね…。この一件で慈嬉太后徳馨の娘二人に危機感を抱いたため、代わりに長敘の娘二人に荷包を押しつけた…要するに貴嬪として宮中に招いたわけですね。
     当然、靜芬は後の隆裕皇太后長敘の娘二人は後の瑾妃珍妃です。

    故宮周刊 第三十期 第一版→劉宮女の証言では南海で撮影されたという

    故宮周刊 第三十期 第一版→劉宮女の証言では南海で撮影されたという

     悲劇性と茶目っ気のある挿話が相まって、人気のある珍妃も絶世の美女とされる事もあるのですが…。男装して光緒帝に侍っているところを臣下と謁見しても、お付きの若い宦官ぐらいにしか思われなかったみたいなので、人目を引く容姿ではなかったのかも知れません。
     と言うワケで以前にも出した珍妃?と言われる画像を再掲。

     あと、乾隆帝が登場。一神教の神様かよ!という感じの登場でしたが、光緒帝の初夜にデバガメするような茶目っ気はなさそうですね…。壽皇殿は歴代皇帝を祀った場所なので、ああいう感じの使い方で良いんだと思います。でも、壽皇殿景山の麓にあるんですがそんな感じの描写ではなかったですね。

    若き日の乾隆帝 郎世寧画?

    若き日の乾隆帝 郎世寧画?

     今回は乾隆帝の若かりし日の肖像画上げておきます。皇帝肖像画には落款が無いので普通は作者は分からないのですが、あまりにも独特なタッチなので間違えようがないので郎世寧です。

     一方、春児黒牡丹に弟子入りして京劇の英才教育を受けます。流石に京劇役者さんだけあってこういうシーンは映えますね…。正直驚きました。
     あと、王逸李鴻章麾下への転属ってこんなに早かったかなぁ…と。順桂に比べて王逸の出番が少ないような…。

     と、来週は漸く春児の入内…じゃない宮中入りですね。

    こんな本を買ってみた

     先週今週と割と面白そうな本を購入。まだ読んでいないんですが…。とりあえずざっと紹介。

    ■河内良弘・淸瀨義三郎則府編著満洲語入門』京都大学出版会
     すでに死語として認識されて久しい満洲語の入門編。思ったよりも安かったのでamazonで購入したモノの、最初の数頁ですでに挫折しそうデス…。
     基本縦書きのアルファベットなんですが、文章の頭と半ばとお尻とでは母音ですら字形が違うらしい…。せめて紫禁城満漢双璧扁額くらい読めればいいなぁ…と思ったんですけど…。とりあえず語彙だけは拾えそうです…。

    ■中野美代子『「西遊記」XYZ このへんな小説の迷路をあるく』講談社選書メチエ
     いつもの通り、中野センセ西遊記本です。今回は明刊本にのみ掲載されているに注目したみたいです。
     え~っと…流石にここまで来ると正直素人にはお勧めできないレベルですね。中野センセの”《西遊記》は明代の匿名練丹術士が編集した暗号にまみれた本だ!”と言う説に従って、むしろ宗像教授に説明してもらった方が良いような説を展開してます。
     万暦年間という時代を洋の東西から見たり、《西遊記》に登場する詩を類書に見立てたりするあたりは面白いんですが、陰陽五行がどうとか音通でどうのこうのと言われるとどうも…申し訳ないんですが、トンデモ通り越して、もはやムーっぽいんですけど…。それに、トンデモ説のほとんどが音通をキーワードにする傾向があるので、思わず自衛本能がはたらきますね。
     それに、中野センセの説は面白いにしても、問題は匿名の練丹術士達が、どうしてそんなワケの分からない仕掛けをワザワザ《西遊記》に仕掛けたのか?と言うあたりに説得力のある説明が無い限りこのあたりは、読者はポカーンとせざるを得ないんですけど…。そこで、《西遊記》は賢者の石を作るためのレシピだったんだよ!とか言われたら、むしろ天晴れと感動しますけど…。
     また、清代の編者達が明代の《西遊記》の本質を理解しなかったばっかりに、詩などをばっさり切った!とする割には、元刊本の《西遊記》にも陰陽五行の仕掛けがほどこされてると言われても、正直牽強付会という四字熟語が頭の周りをクルクルするのみなんですが…。
     あと、今更日本のドラマ三蔵役を女性が演じているのは(最近の学生は三藏が女性だと思い込む人がいるので)けしからん!とか、《西遊記》の邦訳と言えるのは、明刊本李卓吾評本を底本とした岩波文庫版の中野センセ訳著と、清刊本=《西遊真詮》を底本にした太田辰夫センセ&鳥居久靖センセ訳の平凡社版だけだ!と叫んでみたり、《中国大百科全書》に《西遊記》の記事が呉承恩の項にしかないことで、まだ俗説に拠っているのか!と嘆くなど、結構愚痴成分も高い感じです。
     まあ、自分みたいな斜めから読む読者にとっては、コレはコレで面白いんですけどね。

    ■ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』ビームコミックス
     書店で手ぬぐいと風呂桶抱えたローマ彫刻の表紙を見て、衝動買いしてしまった漫画。帯に書かれているとおり、『古代ローマの男、現代日本の風呂へタイムスリップ!!そこで目にした日本の風呂文化に驚愕した彼は…!?』と言った内容。タイムスリップするのは基本的に風呂to風呂。しかも、風呂漫画なのにサービスショットがオッサンのケツとかばあさんのバストアップとか、ほぼ嫌がらせの範疇。
     こんなにふざけた設定なのに、時代設定がキッチリとハドリアヌス帝の時代となっていて、実に細かい風俗描写がなされていて(文献漁ってもナカナカ当時の日常生活はイメージしづらいと思う)、考証的には自分レベルが指さして笑える範囲にはないデス。この辺が小気味良いです。
     この巻では、銭湯→露天風呂→自宅風呂→風呂ショールーム→湯治場にタイムスリップしては、主人公の建築設計士=ルシウス・モデストゥスが斬新な風呂を設計して何故か出世していく話になってます。心配なのはそんなに風呂ネタだけで話が続くのかという点だけですが…。
     ともあれ、面白かったです。桜玉吉の漫画でもおなじみのO村編集長も出演されてます。ってこの漫画12月に出てたのか…。

    ■上橋菜穂子・チーム北海道『バルサの食卓』新潮文庫
     数日前に友人に『上橋菜穂子の小説もよく読む。するとやはり旨そうな料理が出てくる。』と言われて、ほんとかよ~アニメ版の『精霊の守人』は見たけどさして美味そうじゃなかったけど…。と思いつつペラペラ捲ると美味そうだったので買っちゃいました。
     なんだかんだ美味そうな料理の出てくる小説は面白いですよねぇ…。どんなに豪華な食事を書いても全然美味しくなさそうな小説とか、料理名の列挙だけで味気ない小説を読むと、この作者余程食に興味が無いんだなぁ…とか思いますが…。

    ■安彦良和『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 20 ソロモン編・後』角川コミックス・エース
     ドズルの戦死シーンに粛然と…。それにしてもキシリアの卑劣さが増してるナァ…。

    NHKドラマ 蒼穹の昴 第三回 修業

     と言うワケで、『蒼穹の昴』の第三回です。……新幹線の中で小説版の文庫本を十年ぶりに読んだんですが、いや、別物ですね…。ドラマももうちょっと破天荒な梁文秀で良いと思うんですが…。なんだか春児の浄身も畢五が出て来ないから唐突な感じになっちゃったわけですねぇ…。と、一応感想をば…。

     今週では梁文秀科挙の結果状元に選ばれるわけですが…。なるほど…言われてみれば、殿試って保和殿前で行ったんですね。小説でも確かそんな表現だったと思うんですが、座卓を持ち込んで答案を書くという発想がなかったので些か驚きました。
     え~気になったのは保和殿扁額満漢合壁になってなかったことですかね。現在の北京故宮に行くと確かに保和殿始め外朝三大殿及び端門午門太和門に付随する門や建築物)は漢字のみの扁額がかかっています。

    1995年06月07日宣和堂撮影

    1995年06月07日宣和堂撮影

     コレは袁世凱中華民国大総統から中華帝国洪憲帝にクラスチェンジしようとして失敗した際に掛け替えたワケですから、時代考証的にはアウトです。折角横店で撮っているのに、満漢合壁扁額が作られていないのはおそらく、元ネタになるべき扁額が残っていなかったので、満洲文字がいい加減になるくらいならいっそ作るのやめちゃえ!と言うコトなんですかねぇ…。
     あと、ミセス・チャン梁文秀の淡いロマンスで、辮髪の髪結いが重要なファクターとして登場しているのはドラマオリジナルですがなかなか良いシーンでした。ただ、出来ることなら梁文秀辮子は見るからに荒れてるくらいの方が良かったと思います。ただ、この頃の満洲女性が男性の辮子を結ったか否かはちょっと自分も分からないんですけどねぇ…。
     と、ミセス・張固倫寿安公主であることが明かされ、慈嬉太后と仲良くおしゃべりするシーンがあったんですが、小説風に慈嬉太后はおきゃんな口調に訳されていないあたりにドラマとして魅力に些かの不安が…。春児に心を開いたり、李鴻章が来てもこの調子だとちょっと残念なんですが…。

    《清史図典 第十一冊 光緒 宣統朝 上》P.83

    《清史図典 第十一冊 光緒 宣統朝 上》P.83

     で、英字新聞の記事に出てきた栄禄との不倫は割に昔からよく言われたデマですね。栄禄は16歳という年少時から官界デビュー果たして、以後出世街道をひた走って国権を担う役職を累任します。彼が満洲旗人だとしても異例の出世と言えます。が、そもそも栄禄慈嬉太后の甥にして、光緒帝の従兄弟に当たる人物ですから、その縁故により出世したわけです。実にシンプル。なので不倫関係とかは流石にないと思われます。

     そうそう、予告見るに来週は珍妃乾隆帝が出演する模様です。ちょっとワクワク。

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