一代宗師

 と言うワケで、《一代宗師(邦題:グランド・マスター)》も見ました。うーん。とても王家衞というかなんというか、難しい映画でした。例によってネタバレ全開の感想を…。

 まず、予告詐欺というかあらすじ詐欺というか…。八極拳行意拳永春拳が天下を争うぜ~とか、武林の南北を統一して日本軍蹴散らかすぜ~とか、抗日カンフー炸裂だぜ~とか、あらすじ見るとそんな感じに見えますが、何というか、全然違います。いや、違うことはないんですが、むしろ章子怡演じる行意拳の使い手・宮若梅の復讐劇がメインストリームで、梁朝偉演じる永春拳の使い手・葉問も何というかナレーターぐらいの役割であまり活躍しません。
 酷いのは張震演じる八極拳の使い手・一天線で、章子怡と列車の中で一度だけ訳あり風にすれ違うだけで、一人だけストーリーから浮きまくってましたね…。突然現れて、一天線は特務機関を抜けた…とか言われても、え?この人特務機関の人間だったの?程度の説明もないのでとても残念。更に、特務機関を抜けて何故か香港の床屋、白玫瑰理髪店で働く事になるのですが、これまた説明が無いので一天線は床屋やりたくて特務機関の同僚を手にかけたみたいな感じになってます。おまけに、利権絡みで白玫瑰理髪店を強請に来るのが小瀋陽…。明らかに目力で張震演じる一天線に負けてます。まぁ、それでも自分はこの劇中劇のようなギャグパート大好きですし、オフ会で《一代宗師》のことを話しても、誰も章子怡のことも梁朝偉のことにも触れず、ひたすら張震白玫瑰理髪店小瀋陽の話しかしませんでしたから、かなりインパクトあったんだと思います。他で思い出すとしたら、中盤の奉天北駅満鉄機関車の牽引力を無視した無駄に長い列車と、序盤の死亡遊戯みたいな妓楼・金楼くらいですしねぇ…。
 拳法についてどれくらい正確に技が出てきているのかは正直分かりませんが、正確だろうと不正確だろうとこの映画に於ける拳法は人と人との相互理解のためのダンスみたいなモノなので、技がどうのこうの言うコト自体がナンセンスに感じます。あれです、王家衞拳ですよ。比べちゃいけないと思いつつ、甄子丹の《葉問(邦題:イップ・マン 序章)》を見ると、甄子丹は相手が大振りの派手な技を繰り出してくると、必要最小限の動きでこれを制していくあたりすげぇかっこよかったんですが、この映画では梁朝偉が序盤すぐに雨の中で大振りの大技決めていて何というか、これが観たいわけじゃない感に苛まされました。正直、これぞ永春拳!これぞ行意拳八極拳!みたいな見せ場は…無かったですねぇ。ええ、綺麗でしたけど。困ったことに面白くないというわけではなく、期待してた映画ではないと言うだけなんですよねぇ…。
 と言うコトで、個人的なこの映画の見せ場は…。1:白玫瑰理髪店での新喜劇 2:満鉄の横での宮若梅×馬三の仇討ち合戦 ってトコですかね。正直、この映画は葉問出て来なくても良かったような気がしますし、そもそもこのテーマに拳法が必要だったのかも疑問です。更に宮若梅とか一天線とか検索してみたモノの映画以外のヒットがないところみるとどうにもこの人達も架空の人物っぽいので、そもそも舞台をあの時代に設定しなくても…下手するとSFでも良かった気すらしてきました。白玫瑰理髪店さえ出て来れば、多分観た後の感想は変わらなかったんじゃ無いかと思いますが…。
 あ、そうそう終盤にちょっとだけ辮髪葉問が出て来るので、そこだけは評価します。宮宝森の若かりし頃が辮髪じゃなかったのでガッカリしてたんですが、どう言う時間軸だったんですかねぇ…。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です