NHKドラマ 蒼穹の昴 第八回 龍玉の歌

 最初に…いや、皆さん分かっておいでだと思いますが、龍玉なんて本当はありません。あんなマジックアイテムというか天命の具現化したダイアモンド。《三國演義》に出てくる伝国の玉爾みたいなアイテムですね。
 で、肝腎の龍玉の歌ですが、原作とかなり違ってますね。ドラマ版はこんな感じでした。

春去春来
雲聚雲散
龍隠龍飛
玉兮百兮莫能測
得兮失兮莫奈何

邦訳
春が来ては 去り
雲が集まり 散りゆく
龍が来て また龍が去る
玉か石かは定かならず
得たか失ったかも分からず

 縦読みすると、春雲龍玉得となって実に中国的な予言詩っぽくなりますね。
 ちなみに原作の歌はこんな感じ。

万歳爺 万歳爺
哀れな奴才を お許し下さい
広大無辺のみめぐみは
天に轟き 地にあまねき(『蒼穹の昴 2』講談社文庫 P.280)

万歳爺 万歳爺
奴才は 口がさけても申しませぬ
乾隆様のお匿しになった
あの龍玉のありかなど(『蒼穹の昴 2』講談社文庫 P.280~281)

 流石にこの辺はドラマ版の方がそれっぽいですね。

 あと、ドラマでは安徳海の死に際して春児宝貝を上げちゃうわけですが、原作では陳九老爺こと陳蓮元に上げちゃってますね。この辺、慈嬉太后の寵愛を一身に受けた安徳海なら、たんまりお金を持ってるので宝貝も買い戻してるハズですから、このあたり、うだつの上がらないぐうたら師匠・陳九老爺春児が惜しげもなく自分の宝貝を与えて後宮太監の人気を一気に得る!と言う場面には繋がらないですねぇ…。さして親しかったとも言えない人にダーンと上げちゃうあたりが春児なんですけどねぇ…。
 さらに、刀子匠が字幕では畢五になってましたけど、セリフでは小刀劉って言ってますね…。どちらも原作に出てきますけど、畢五も原作ほど出て来ないし…蘭琴も怪しいほどにきれいじゃないし、春児の義兄弟でもないですし…。ここは小刀劉でも良かったかもですね。原作だとあんな恰幅良くなかったですし、良い暮らしもしてなかったですし…。

 ちなみに春児の棒叩きの原因になったのが、慈嬉太后の料理。原作でも春児の料理の師匠・周麻子造蘇肉李蓮英に羽虫入れられたために、足を折られて後宮追い出されたりしたわけですが、ホントにこんな事あったのかなぁ…と思っていたらこんな記事も…。

 西太后専用の西膳房の責任者は、謝太監が取り仕切る。房には太監の弟、謝二をはじめ今では倣膳飯荘に残る「四大抓(北京編一四三頁参照)」料理を作ったとして知られる有名な厨師が揃っていた。なかでも謝二は西太后の大好物の、焼麦を作るのが得意で、皮は紙のごとく薄く餡もとても旨く作るので大のお気に入りとなっていた。
 ある日、西太后が東陵に出かけたときのこと。この時西膳房から房師が随行したのだが、謝二は所用を理由に随行しなかった。西太后はいつものように焼麦を所望した。一口食べるといつもの味と香りとは違うことに気がついた。そのことを問いただすと、謝二ではなく劉大という者が作ったと分かった。それを聞いた西太后は怒るまいことか。責任は劉大ではなく謝二にありと、至急に謝二を呼び出し、大板による四十たたきの刑に処したのである。大板で十もたたかれると背の皮が剥けた、といわれるか謝二は焼麦一つで死ぬ目にあわされたのだ。[1 横田文代良『中国の食文化研究〈天津編〉』辻学園調理・製菓専門学校 P.116]

 慈嬉太后食通だという伝説とともに、料理の失敗で処刑された!という伝説は割と多いですね。ドラマとかだと割とメジャーなネタかと。あと、原作に出てきた菜包は多分、愛新覚羅浩さんの『食在宮廷』の記事からだとおもわれ…。ただ、菜包の故事の主人公がドルゴンだったりホンタイジだったりしてあやふやな話だったと思いますが…。あんまり慈嬉太后菜包を繋げる記事は見たことないですね。

3 comments

  • 面白いですね。
    私は小説の方を読んでなくて ドラマのみです。
    ドラマの演出法だけでも面白いと思っていました。
    私の連想は 海です。 南半球

  • すみません。
    この連想では別の物を探しているので混乱したような気がします。
    史実でないことがわかる詳しい比較 ありがとうございます。
    この龍玉探しは しかし本当に面白いです。

    • □鳥が様
       一ヶ月以上も放置して済みません。ただ、龍玉自体は続編で漸く出てきたりするんですがねぇ…ww

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